PROCESS製作工程
熟練の妙技ここに京人形師たちの手わざ
雛人形の製作工程は、頭師、髪付師、手足師、小道具師、着付司など、それぞれに分業化された専門職人達の熟練の技が集結して雛人形ができあがります。古くからの歴史を誇る事業所が多く、ほとんどの場合、一つの事業所で一つの工程のみを行うのが特徴です。
また、雛人形の製造技術は一子相伝的に継承され、部外者にはほとんど伝授されません。
永い歴史のなかで培われてきた職人たちの研ぎ澄まされた技が受け継がれ、伝統の技術を守りつつ、熱い心と技を受け継ぐ若手技術者の育成と向上に努力を重ねています。
頭師
頭師の工程は、型抜きから始まり、乾燥(約4~5日)、眼入れ、地塗り、なか塗り、めきり、さらえ、研磨、上塗り、描毛などがあります。なかでも、眉や口紅の描画はとくに熟練の技術と集中力を必要とします。
動画では、頭師職人の川瀬猪山さんが、たくさんの筆を使いこなしながら手馴れた手つきで雛人形の柔和な表情を作り上げていきます。
1型抜き
2乾燥
3眼入れ
4地塗り
5めきり
6かいげ
髪付師
髪付師の工程は、頭に髪の毛を植えつける溝を掘り、髪の毛を植えつけ、熱したコテで髪を梳かしながら髪型を作り、鬢(びん)掛け、乾燥、髪結い、飾り付けなどを行っていきます。
動画では、髪付職人の井上さんが、さながら人間の女性の髪を手入れするかのように、正確に長さを測りながら髪を切り、小マメに櫛で梳かしながら髪型をセットしていく様子がご覧いただけます。
1溝をほる
2髪の植え込み
3鬢かけ
4髪結い
5飾りつけ
手足師
手足師の工程は骨組み、地塗り、上塗り、さらえ、爪切り、爪塗りなどがあり複数回繰り返す工程を含めると約30工程にも及ぶそうです。一つ一つが地道な手作業で手の爪の先までも見事に表現していきます。
動画では、現在は数少ない手足師職人である澤野さんが、一本の木片から艶のある雛人形の手を作り上げる様子がご覧いただけます。
1骨組み
2地塗り
3上塗り
4さらえ
5爪塗り
着付司
着付司の工程は、糊付けした和紙を西陣織に貼り付け切断し、縫いつけ、アイロンがけ、袖付け、着せ付け、組み立てを行います。着せ付けでは、羽織や単を糊付けし装着させ、綿を詰めてバランスの調節を行います。
動画では、連携を取りあって複雑な工程をこなし、最後に四世雛幸が丹精を込め、着せ付けや全体の調節を行い、長かったすべての雛人形作りの工程を締めくくります。
1付けした和紙を着物(西陣織)に貼り付け切断する。
2切断した着物を縫いつけ、衣装にアイロンをあてる。
3出来上がった衣装に、ミシンを使用して袖付けを行う。
4羽織を糊付けし衣装内に綿をつめ、着せ付けを行う。
5全体のバランスを調節しながら、単を着せ付けていく。
6手足・頭をはめ込み細部をチェックし完成。
「手わざ」
京都は日本の心のふるさと。侘び寂びそして雅びという日本人の美意識は、すべて京都から生まれました。
人形のふるさともまた、京都です。山紫水明に恵まれた風土のなかで、各時代の信仰・風俗とかかわりあいながら、人々の心の奥深くに根づいてきました。今もなお、古い町家には当時の人形を受け継ぎ、代々に伝えているところが多いといいます。
京人形は多くの人形師の手で生み出されます。頭、髪付、手足、着付、そして小道具、造花屏風‥、京都に脈々と伝えられる人形文化の歴史は、いっぽうでこれらの人形師たちの巧みな手わざの歴史でもあります。
平安の昔から伝えられる雅びな京人形の歴史。時代や生活様式は大きく変わっても、人形をいつくしむ気持に変わりはありません。